2大音楽生成AIの設計思想の違いを理解し、それぞれに最適化されたプロンプトを組み立てられるようになることを目的とした研修用マニュアルです。
同じ「音楽生成AI」でも、SunoとMurekaは根本的な設計思想が異なります。まずこの違いを頭に入れておくと、後述するテクニックの「なぜそうするのか」が理解しやすくなります。
テキストからドラマチックな音楽を創り出すことに長けたAI。言葉の行間や「エモい」といった抽象的な表現を汲み取るのが得意な一方、生成結果には偶発性(いわゆるガチャ要素)があり、狙った通りに仕上げるには指示を絞り込む「引き算」のコツが必要です。
視覚・聴覚素材を音楽に変換できるAI。画像や音声ファイルをそのまま指示書として使える拡張性を持ち、独自技術「MusiCoT(Music Chain-of-Thought)」により、曲の構成など人間の指示に対して非常に実直かつロジカルに組み立てます。
操作画面が似ているため混同しがちですが、実際の挙動には明確な違いがあります。
[Intro] [Verse] [Chorus] [Outro] のような角括弧タグを使って曲展開を指示する仕組みも同様に機能する。| 機能・特性 | Suno | Mureka |
|---|---|---|
| 指示のメディア | テキスト(言葉)のみ | テキスト+画像・動画・音声ファイル |
| プロンプトの制限 | 約120文字の制限があり、「引き算」が必須 | 文字数の制約は緩やかで、画像や参照音源で補完できる |
| AIの解釈の癖 | 空気を読んで自動的にサビを盛り上げる | 指示に対して非常に実直(展開の念押しが必要) |
| 独自エコシステム | 既存曲の続きを作る「Extend」機能 | ボイスクローン、他人の曲のリミックス機能 |
Sunoをハックする鍵は「制限文字数内での引き算」です。要素を詰め込みすぎず、優先度の高いものだけを厳選します。
文章ではなく、「名詞・形容詞をカンマで区切る」のが鉄則です。重要度の高い順に左から並べます(英語推奨)。
Sad J-Pop song with piano and guitar that makes me cry.
→ 文章になっており、AIがどの要素を優先すべきか判断できない。「泣ける」という抽象的な感情表現も伝わりにくい。
J-Pop, 125 BPM, Catchy, Emotional Piano, Electric Guitar, Female Clear Vocal
→ ジャンル→テンポ→楽器→ボーカルの順で単語を並べているため、AIが優先順位を把握しやすい。
ジャンル違いでの具体例:
Synthwave, 118 BPM, Driving, Retro Synth Bass, Analog Synth Lead, Instrumental
City Pop, 94 BPM, Nostalgic, Soft Upright Piano, Warm Bass Guitar, Male Smooth Vocal
Modern Metal, 150 BPM, Aggressive, Distorted Guitar, Double Kick Drum, Male Powerful Vocal
歌詞の前に角括弧 [ ] を配置し、AIに展開を強制します。
| タグ | 役割 | 使い方のコツ |
|---|---|---|
[Intro] | イントロ | [Intro: Piano Solo]のように楽器を指定すると、高確率でそのソロから始まる。 |
[Verse] | Aメロ・Bメロ | 音数を減らし、落ち着いて歌わせる。サビとの対比を意識する。 |
[Chorus] | サビ | Sunoはこのタグを認識すると自動的に盛り上げてくれる。 |
[Bridge] | 大サビ前のCメロ | 転調や展開の切り替えを促す。 |
[Outro] | アウトロ | 曲を自然にフェードアウトさせて完結させるために必須。省略すると唐突に終わることがある。 |
Instrumental, Ambient のように明記し、謎のハミングが入り込むのを防ぎます。
Murekaをハックする鍵は「画像への役割分担」と「実直なAIへの念押し」です。
Murekaは画像認識が極めて強力です。そのため、Style欄のテキストは簡潔にし、「画像では説明できない音楽的要素」だけをテキストで補足するのが正解です。
「切ない」「夜のネオン」「近未来」「スモーキーな」など、雰囲気や世界観にまつわる抽象的な表現。
ジャンル、BPM、楽器構成、声質など、画像だけでは伝わらない音楽的パラメータ。
Style欄:City Pop, BPM 94, Soft Upright Piano, Low Soft Female Vocal
添付ファイル:深夜のネオン街と雨を写したイラストを1枚添付
Style欄:Acoustic Pop, BPM 100, Warm Acoustic Guitar, Bright Female Vocal
添付ファイル:朝日が差し込むカフェの窓辺の写真を1枚添付
MurekaはSunoほど「空気を読んで勝手に盛り上げる」ことをしません。サビを爆発させたい場合は、Style欄と歌詞欄の両方で念押し(連動)をする必要があります。
[Chorus] と書くだけでなく、その直前に [Build-up] や [Drop] を挟む。Dynamic structure, Explosive chorus と記述し、展開のメリハリをAIに強く意識させる。Pop Rock, BPM 132, Dynamic structure, Explosive chorus, Powerful Female Vocal
Heavy Metalと書くような矛盾した指示を出すと、AIが混乱してメロディが崩壊します。画像とテキストの方向性は必ず一致させてください。
同じ楽曲企画(お題)から出発しても、SunoとMurekaでは指示の組み立て方がまったく異なります。以下の2つの演習で、その「翻訳」の考え方を確認してください。
Summer Pop, 128 BPM, Anthemic, Bright Synth, Group Chant, Male Energetic VocalSummer Pop, BPM 128, Bright Synth Lead, Dynamic structureCinematic Orchestral, 90 BPM, Uplifting Strings, Powerful Brass, InstrumentalInstrumental を必ず明記し、ハミングの混入を防ぐ。Cinematic Orchestral, BPM 90, Uplifting Strings, Epic Brass, Instrumental, Dynamic structure[Build-up] → [Climax] の順で構成タグだけを入力(歌詞なし)。目的に応じて、時間・コスト・技術的難易度のバランスを見ながらアプローチを選びます。
| 戦略シナリオ | 時間(手軽さ) | コスト(消費) | 技術的難易度 | 即日着手できる最小アクション |
|---|---|---|---|---|
| ① Suno王道流用 (最小リソース) |
★★★★ | ☆ | ★☆☆ | 過去にSunoで成功したタグをそのままMurekaのカスタム欄にコピペし、挙動の差を確かめる。 |
| ② Murekaフル活用 (最大リターン) |
★★ | ★☆ | ★★★ | 企画の世界観(夜のネオン、朝のカフェなど)に合う画像を1枚用意し、Murekaに読み込ませて生成する。 |
| ③ 役割の厳密分離 (リスク回避) |
★★ | ★★ | ★★☆ | BGM(インスト)を作りたい時は、MurekaのStyle欄にInstrumentalを執拗に記述しノイズの混入を防ぐ。 |
基本を押さえたうえで、さらに一歩踏み込んだ活用法です。
Sunoを繰り返し生成していると、「メロディや伴奏は最高なのに歌い出しにノイズが入った」「構成が途中で崩れた」といった、部分的に優れた失敗作が生まれることがあります。これを捨てずに、その音源ファイルをMurekaのオーディオリファレンス(参考音源)として読み込ませ、「このメロディをベースに、綺麗な構成でリミックスして」と指示するのが有効です。Sunoの生み出す「偶発的な良さ」を、Murekaの「実直な論理構成力」で整える組み合わせ技です。
Murekaの簡単モード(日本語対応)に「深夜のバーで、冷たい雨の音を聴きながら、アンニュイに歌うシティポップ」のように日本語で丸ごと指示を出して生成させます。生成された曲の詳細情報には、AIが自動生成した英語の音楽タグが表示されるため、それをコピーしてSunoのStyle欄に転用します。人間が単語だけで思いつくよりも精度の高いタグの組み合わせが手に入ります。
プロンプト作成時にすぐ参照できるよう、よく使うタグの一覧です。
| カテゴリ | タグ例 |
|---|---|
| ジャンル | J-Pop / City Pop / Synthwave / Modern Metal / Lo-fi / Acoustic Pop / Cinematic Orchestral |
| テンポ・曲調 | Upbeat / Melancholic / Groovy / Anthemic / Nostalgic / Aggressive / Uplifting |
| 楽器 | Emotional Piano / Acoustic Guitar / Synth Bass / Distorted Guitar / Upright Piano / Strings / Brass |
| ボーカル | Female Clear Vocal / Male Gritty Vocal / Androgynous / Low Soft Female Vocal / Male Powerful Vocal |
| 構成タグ | [Intro] / [Verse] / [Chorus] / [Bridge] / [Outro] / [Build-up] / [Drop] |
| インスト指定 | Instrumental / Ambient |
実際にプロンプトを作成する際は、以下を確認してください。
Instrumentalを明記した
こちらの資料はポリプロピレン様が作ってくださいました。
リスナーから音楽生成AIの使い方を聞かれたけど、
「全く音楽生成AIを触ったことが無かったので何も答えられない。」
そこでポリさんにお話をしてみたところこのような資料をまとめてくださいました。
急な話にもかかわらず、本当にありがとうございます。
ポリプロピレンさん:X(旧Twitter)